Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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うたのたてやましんじゅういっきょく

唄立山心中一曲

泉 鏡花

Leggi 唄立山心中一曲 (うたのたてやましんじゅういっきょく) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.835 caratteri · 61 schermate

Aozora Bunko

七

――実はこの時から数えて前々年の秋、おなじ小村さんと、(連がもう一人あった。)三人連で、軽井沢、碓氷のもみじを見た汽車の中に、まさしく間違うまい、これに就いた事実があって、私は、不束ながら、はじめ、淑女画報に、「革鞄の怪。」後に「片袖。」と改題して、小集の中に編んだ一篇を草した事がある。

確に紫の袖の紋も、揚羽の蝶と覚えている。高島田に花笄の、盛装した嫁入姿の窈窕たる淑女が、その嫁御寮に似もつかぬ、卑しげな慳のある女親まじりに、七八人の附添とともに、深谷駅から同じ室に乗組んで、御寮はちょうど私たちの真向うの席に就いた。まさに嫁がんとする娘の、嬉しさと、恥らいと、心遣と、恐怖と、笑と、涙とは、そのまま膝に手を重ねて、つむりを重たげに、ただ肩を細く、さしうつむいた黒髪に包んで、顔も上げない。まことにしとやかな佳人であった。

この片袖が、隣席にさし置かれた、他の大革鞄の口に挟まったのである。……失礼ながらその革鞄は、ここに藤助が饒舌るのと、ほぼ大差のないものであった。

が、持ぬしは、意気沈んで、髯、髪もぶしょうにのび、面は憔悴はしていたが、素純にして、しかも謹厳なる人物であった。