Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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うたのたてやましんじゅういっきょく

唄立山心中一曲

泉 鏡花

Leggi 唄立山心中一曲 (うたのたてやましんじゅういっきょく) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.835 caratteri · 61 schermate

Aozora Bunko

」

「何に。」

吻としながら、小村さんは気競ったように、

「踏着けられた狗から見りゃ、頭を打つけるなんぞ何でもない。」

日頃、沈着な、謹み深いのがこれだから、余程周章てたに違いない。

きゃんきゃんきゃん、クイッ、キュウ、きゃんきゃんきゃん、と断々に、声が細って泣止まない。

「身に沁みますね、何ですか、狐が鳴いてるように聞えます。」

木地の古びたのが黒檀に見える、卓子台にさしむかって、小村さんは襟を合せた。

件の油煙で真黒で、ぽっと灯の赤いランプの下に畏って、動くたびに、ぶるぶると畳の震う処は天変に対し、謹んで、日蝕を拝むがごとく、少なからず肝を冷しながら、

「旅はこれだから可いんです。何も話の種です。……話の種と言えばね、小村さん。」

と、探らないと顔が分らぬ。

「はあ。」

「何ですか、この辺には、あわれな、寂しい、物語がありそうな処ですね。あの、月宵鄙物語というのがあります、御存じでしょうけれど。」

「いいえ。」

「それはね、月見の人に、木曾の麻衣まくり手したる坊さん、というのが、話をする趣向になっているんですがね。(更科山の月見んとて、かしこに罷登りけるに、大なる巌にかたかけて、肘折れ造りたる堂あり。