Classici giapponesi con furigana
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ちじょう
地上
島田 清次郎
Leggi 地上 (ちじょう) di 島田 清次郎 (しまだせいじろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 175.250 caratteri · 350 schermate
平一郎は机に頭をかかえて悶えていた。
「大河、いるかえ」としゃがれた声がして乙彦がはいって来た。平一郎は返事する気もせず振り向いただけだった。本能的な嫌悪が押し寄せてくる。
「お前、どうして飯を食わないのだい」
「少し気分が悪いですから」答える平一郎の顔をじろ/\見ていたが乙彦は突然、意地の悪い表情で「お前は実に僕の母さんに似ているね」と言った。
「そうですか」と平一郎は答えた。それどころでなかったのだ。
「顔色が悪いよ。西洋館の屋上広場へ行って涼んで来よう。おいで、大河!」
乙彦は引きずるように平一郎を西洋館へ連れて行った。真暗な狭い螺旋形の階子を登って二人は屋上へ出た。深い蒼い夏の夜空がそこにあった。星が輝いて見えた。夜風が冷やかだった。東京の市街が一切の人間の悲しみと苦しみと歓びとを深い夜に包んだまま夜霧を通して下に見え、灯があか/\と人間の思慕のように空を染めていた。
「むこうのあの黒藍色が太平洋だよ」と乙彦が言った。「己は早く親爺が死ねばいいと思っているのさ。そうすればこの邸もこの家も金も皆己の心のままだからね!」
あか/\と空に燃える都会の灯を眺めていると淋しい涙が平一郎に湧いて来た。