Classici giapponesi con furigana
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ちじょう
地上
島田 清次郎
Leggi 地上 (ちじょう) di 島田 清次郎 (しまだせいじろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 175.250 caratteri · 350 schermate
彼は口笛で野球の応援歌を歌いはじめたが、周囲に不調和なのに気づいてすぐに止めてしまった。彼は格子の前の鉄柵につかまって靴の泥をがじり/\落としはじめた。
「平一郎さんじゃない?」それは湯上りの帰りらしい上気した冬子だった。
「さ、おはいり。今、学校から帰ったの。おはいり」平一郎は冬子から発散するいい香料の匂いを快く味わった。冬子の後について土間へはいってゲートルの釦をはずしているところへ、母のお光が出て来た。
「冬子姐さん、お帰りなさい」市子が元気よく冬子を迎えた。
「小母さん、平一郎さんはここにいらしってよ」お光にさらに市子は言う。
「え、ありがとう。平一郎、お前遅かったじゃないか」
「うむ」
「今、わたしが帰って来ると、家の前につくねんと立っていらしったのですよ」
「そうですの――こっちへおいで」
「うむ」
彼はお光にしたがって長い廊下、土蔵の前、暗いじめ/\した土蔵の横を通って、土蔵裏の一室に自分の古机を見出した。彼は寂しい気になった。洋服のまま、室の中央に仰向けになって深い溜息をもらした。彼には人生は堪えられない苦痛なものに思われたのだ。(こんなにまでしなくては、生きていられないのか!)と彼は幼い心に叫んだのだ。