Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうふ

坑夫

夏目 漱石

Leggi 坑夫 (こうふ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 141.690 caratteri · 283 schermate

Aozora Bunko

「ここは何と云う所です」

と聞いたら、長蔵さんは、

「ここ? ここを知らないのかい」

と驚いた様子であったが、笑いもせずすぐ教えてくれた。それで所の名は分ったがここにはわざと云わない。自分がこの繁華な町の名を知らなかったのをよほど不思議に感じたと見えて、長蔵さんは、

「お前さん、いったい生れはどこだい」

と聞き出した。考えると、今まで長蔵さんが自分の過去や経歴について、ついぞ一と口も自分に聞いた事がなかったのは、人を周旋する男の所為としては、少しく無頓着過ぎるようにも思われたが、この男は全くそんな事に冷淡な性であった事が後で分った。この時の質問は全く自分の無知に驚いた結果から出た好奇心に過ぎなかった。その証拠には自分が、

「東京です」

と答えたら、

「そうかい」

と云ったなり、あとは何にも聞かずに、自分を引っ張るようにして、ある横町を曲った。

実を云うと自分は相当の地位を有ったものの子である。込み入った事情があって、耐え切れずに生家を飛び出したようなものの、あながち親に対する不平や面当ばかりの無分別じゃない。何となく世間が厭になった結果として、わが生家まで面白くなくなったと思ったら、もう親の顔も親類の顔も我慢にも見ていられなくなっていた。