Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぼちてんぼうてい

墓地展望亭

久生 十蘭

Leggi 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 46.485 caratteri · 93 schermate

Aozora Bunko

頬のうえにまた、涙がすじをひいていた。

(勝手に泣いていろ)

竜太郎は、大きな声を出したくなるのを我慢しながら、ゆっくりと煙草に火をつける。

少女は、あわれにも見えるような、ともしい笑顔をつくって、

「あなた、悲しいことがおありなの」

少女は、チラと眼をあげて、怒ったような顔で突っ立っている竜太郎のようすを見ると、ケープに顎を埋めて萎れかえってしまったが、ちょっとの間沈黙したのち、おずおずと、おなじことを問いかけた。

「悲しいことが、おありなの」

竜太郎は、やり切れなくなって、軽く舌打ちした。

「たいへんに、ね」

「愛情のことで?」

竜太郎は、すこし大きな声をだす。

「死ぬことにきめたから、それで、死のうと思うだけのことです。……それはそうと、あなたはずいぶん変った香水をつかっていますね、お嬢さん」

(おやおや、おれは、いったい何を言い出す気なんだ)

少女は、急に元気になって、得意らしくうなずいてから、

「そうお思いになって?」

「なんという名の香水ですか」

「名前なぞありませんのよ。あたくしだけが持っている香水なの」

(香水屋の娘なのか、こいつは)

どんな素性の娘なのか、訊ねて見たくなった。