Classici giapponesi con furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Leggi 夏の葬列 (なつのそうれつ) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 60.161 caratteri · 122 schermate
無数の「ぼく」ではない。ぼくはぼくであって、だんじて彼ではない。……しかし、どこがちがう? どこにちがうというはっきりした証拠がある?
ぼくは任意の一点なんかではない。ぼくはぼくという、関口二郎という特定の人間、絶対に誰をつれてきても代用できない一人の人間なのだ、くりかえし、ぼくはそう思った。
しかし、ぼくを彼らから区別するどんな根拠がある? ちがうのは名前だけじゃないのか? 名前なんて、いわば符牒だ。それ以外に、ぼくが彼ら、この団地の任意の何某ではないというどんな証拠がある?
ぼくは、そいつをつくらねばならなかった。そいつはぼくの「必要」だった。自分の独自性、個性を、……つまりこの団地の、無数の黒瀬次郎たちと自分とをはっきり区別する何かを、ぼくはどうしても手に入れねばならない、と思ったのだ。
他の誰でもない自分をしっかりとつかまえておくこと、いいかえれば、それはぼく自身を、ぼくの心の安定をとりもどすことだったかもしれない。
そうして十日ほど前、ぼくはやっとあるお守りを手に入れることができた。もちろん、このことは妻にはないしょだ。これは、あくまでもぼく一箇の問題なんだからな。