Classici giapponesi con furigana
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なつくさせんき
夏草戦記
山本 周五郎
Leggi 夏草戦記 (なつくさせんき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.107 caratteri · 41 schermate
理を尽した部将の言葉に、娘は眼を伏せながらはいと答えた。けれども眉のあたりには心のきまった、確固とした意志の表白があるようにみえた。かの女はしずかに立ち、背負って来た包みの一つを持って戻ると、
「途中でみつけましたので求めてまいりました、皆さまにめしあがって頂こうと存じまして……」そう云いながら包みを解いた、中からは早熟のみごとな梨がころころと転げだした、それを拾い集める娘の手が、ほの暗い燈あかりに思いがけないほど白く嬌めかしくうつしだされてみえた。
明くる早朝、まだ天地の暗いじぶんに、この一隊は北へ向って進発していった。銃隊が先頭になり、槍隊、抜刀隊とつづき、しんがりには荷駄十二頭という順で、……かれらは暁の濃い霧を押しわけ、山峡のけわしい道を踏んで、樹の間がくれに黙々と遠ざかっていった。部落の人々はながいことそれを見送っていたが、やがて思い思いに散ってしまうと、村長の家から昨夜の娘が道へと出て来た、すっかりと足拵えをして、背中には遺骨の包みを結びつけていた。かの女は笠をあげて谷のかなたを見やり、きゅっと唇をひきしめながら、しっかりとした足どりで武者たちのあとを追ってあるきはじめた。