Classici giapponesi con furigana
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なつむしあんどん
夏虫行燈
吉川 英治
Leggi 夏虫行燈 (なつむしあんどん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.200 caratteri · 37 schermate
『又。……今誇って仰っしゃった、備前長船も、誰から戴いた刀だと思し召すか。それも、父の十太夫が……私が幼い時、笛吹川で溺れる所を、助けて戴いたお礼にと――貴方へ贈った物ではございませぬか』
『それを、覚えておられたか』
『忘れて何といたしましょう』
『――ならば、生涯、口が腐っても云うまいと思ったが、平四郎も一言申すぞ』
『オオ、仰っしゃいませ!』
『……いや。……止そう』
と、平四郎は、感情の儘、こみ上げかけた声をふと落して、
『……大人げない。はははは』
相手が、冷ややかになると、彼女はむしろ赫として、
『卑怯な! 卑屈な! ……。その通り、何も仰っしゃれないではございませんか』
『云えないと思うか』
『ええ、私には、何も云われる覚えはございませんもの』
『じゃあ云うが――小夜どの、貴女はよくも、この平四郎を弄ったな』
『え……弄ったとは』
『まだ、甚三郎が長崎表から帰らぬうちの事……よう胸に手を当てて思い出してみるがよい』
『思い出す事? べつに、あなたとの間に、そんな、心にふかく刻まれた憶い出は何もございません』
『ないっ?』
『ええ……ありませぬ!』
『では……では何日か――』