Classici giapponesi con furigana
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ゆうもやのなか
夕靄の中
山本 周五郎
Leggi 夕靄の中 (ゆうもやのなか) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9522 caratteri · 19 schermate
そして前へ戻った。
青竹の筒の片方に、線香を立てる。二三本折れて、折れたのは土の上で煙をあげた。花は大輪でもあるし多すぎた、竹筒へせるだけ※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)して、余ったのは墓標の前へ、横に置いた。それから、そこへ跼んで、眼をつむりながら合掌した。
あの男はこっちを見ている。そう遠くない物蔭から、辛抱づよく、あの細い眼で、じっとこっちを覘っている。
「二十六というと、おれとは三つ違いだったんだな、おいねちゃん」口の中でそっとこう囁いた、「娘のままだったのか、それともお嫁にいったのか、この墓のようすじゃあ、あんまり楽な暮しでもなかったらしいが、死んでほっとしているか、それともやっぱりみれんの残ることがあるか……」
傷心を装うために、そう呼びかけたのであるが、つむっている眼の裏へ、ふっとおつやの姿がうかんできた。
「――おつや」
ふしぎに目鼻だちははっきりしない。色の浅黒い、ひき緊った顔も、肩の細いしなやかな躯つきも、すべてが小づくりで、ふんわりと軽く、柔らかそうであった。
――あたしを伴れて逃げてお呉れ、お父さんは金次を婿にする気よ、もう逃げるほかにどうしようもないわ。