Classici giapponesi con furigana
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よるのわかば
夜の若葉
宮本 百合子
Leggi 夜の若葉 (よるのわかば) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.072 caratteri · 24 schermate
ぐるりの聴衆も、際立ったこのピアニストの内面的な進境で奏される音楽に魅せられた風で、息をつめた満堂の静謐のなかに最後の旋律が消えると、情緒的な拍手の嵐がおこった。アンコールのあとも拍手はしずまらなくて、もう一度出て来たそのお辞儀もやっぱり、さっぱりと真率なものでされている。桃子は熱心に手をたたきながら、もし出来ることなら、この芸術家の手を心から女同士の思いでとって、本当によかったわねえ、とよろこびと激励のひとことを囁きたかった。桃子はこのひとが外国から帰って来たばかりのまだ白いソアレを着ている細そりとした令嬢だった時分から、ひそかな支持者の一人であった。やがて関西の富裕な実業家との華々しい婚礼があり、それから後の数度の演奏は、女性として肉体的にも豊饒な刻々の成熟が反映しているようでありながら、どことなし余分の自身の雰囲気に自分から身を置いているような不安があった。今晩の演奏ぶりがこんなにも生粋でしかも芸術への気魄にみちているのは、どういう変化がこの富と天賦とをゆたかにそなえた女性の内心に生じたからだというのだろう。幸福に飽満したからとはいい切れないもの、もっと女の心の奥に複雑に目醒まされたもの、それが今や彼女の音楽を一層の含蓄と熱意とに満ちたものとしているように思われる。