Classici giapponesi con furigana
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よるのわかば
夜の若葉
宮本 百合子
Leggi 夜の若葉 (よるのわかば) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.072 caratteri · 24 schermate
「お宅――どちらですの?」
「ずうっと大森」
桃子は、
「順助さん――私の分まで買う気なんじゃないのかしら」
ひとり言のように呟いた。
「ちょっと失礼、ね。いってくるから。――私パスなんですもの」
書類入鞄からパスを出して、桃子は順助に向って歩きながら、これ、これ、という風に動かしてみせた。そばへ行くと少し声を落していった。
「――私大丈夫だから――ほんとに心配しなくていいのよ」
「ああ」
列にならんで雑踏するプラットフォームへ出ると、順助は半分冗談めいて、
「どっちが先へ来るだろうかな」
と、左右の線路を見くらべるようにした。やがて、それにはちっともふざけたところのない暖かさのある声で、順助は、
「桃ちゃんが乗ってしまうまで待っててやるよ」
というのであった。
二
中学の二年のとき父を亡くしてから、順助は半分は伯父である川田の家で桃子たち兄姉のなかにまじって成長したともいえる工合であった。三つ年上の広太郎がいつも順助の兄役であった。そのこともあったろう。でも、折々桃子が不思議に思うくらい、桃子の思い出のなかには順助と遊んだいろいろの情景が濃くのこされて来ている。