Classici giapponesi con furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Leggi 夜光虫 (やこうちゅう) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 66.871 caratteri · 134 schermate
「阿呆ぬかせ」
と、言って、ふと声をひそめて、
「――ひょっとしたら刑事に追われたンかも判れへんぞ」
「へえ? ほな、掴まって、カンゴク行きやナ」
「掴まるかどないか、まだ判るけえ!」
「うまいこと逃げてくれたら、ええのになア」
「うん」
「しかし、兄ちゃん、掏摸テぼろい商売やけど、怖いなア。カンゴクへ行かんならん。兄ちゃん、それでも掏摸になるか」
「…………」
次郎はだまって、考えこんでいたが、やがてひょいと足許を見た途端、唇まで真青になった。
「三郎公、えらいこっちゃ、銭がない」
「えっ……? ほんまか」
と、三郎は金入の空罐を覗きこんだ。
空っぽだ。
「盗まれたッ!」
次郎はきっと唇を噛んで、起ち上った。そして口惜しそうに前方を睨みつけながら、
「――畜生! どいつが盗みやがったんやろ。ひどいことをしやがる」
「兄ちゃん、交番へ届けたら、あかんやろか」
三郎は半泣きの声になっていた。
「阿呆! 交番へ届けても戻るもんか。強盗もよう掴まえんのに……」
「どないしたら、ええやろ」
「…………」
もう次郎は答えなかった。
「一銭も持たんと、帰るンか」
「…………」
「いややなア。こんなことなら、ハナヤで美味いもン食べた方がよかったなア、盗まれるより、その方がなんぼええか判れへん」