Classici giapponesi con furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Leggi 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) di 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.647 caratteri · 215 schermate
旅の前には様々の計画もたてるが、いざ大和へ行って古仏に接すると、美術の対象として詳に観察しようという慾など消えてしまって、ただ黙ってその前に礼拝してしまう。拝んで一瞬すべてを忘却出来れば、それでいいではないか――私はそう思うことが多い。そうしている間だけ生の漠然たる不安から逃れられるような気がするのだ。しかしこの刹那がすぎると、今度は際限のない怠惰な気持におちいり、古寺巡りなどもう億劫になってしまう。その折の自分に、好ましく思われた野辺や、一躯の菩薩像の前に坐して、ただわけもなく、うつらうつらと一日を遊び過していたい――そういう気持になる。身のおきどころもないような春の大和では、とくにこんな状態になる。
この春、ちょうど夕方であったが、木津川へさしかかる前、菜の花の咲き乱れた遠い涯に、伊賀の古城が夕映をうけて紫色に燃えているのを見た。それは人の心を無限の虚無に誘うような状景であった。私は観世音菩薩の姿をぼんやり心に浮べてみたり、信仰のことなど考えていたが、それを押しのけるように、この風景は残忍な寂しさをもって迫って来た。夕暮の一きわ鮮かな色彩は、いまはいのちの燃焼のようにみえ、長く私の心に止った。