Classici giapponesi con furigana
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おおしまができるはなし
大島が出来る話
菊池 寛
Leggi 大島が出来る話 (おおしまができるはなし) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9856 caratteri · 20 schermate
夫以来譲吉はズーッと、学資を近藤夫人の手から仰いで居た。が、近藤夫人の譲吉に対する厚意は、ただ学資の補助と云う、物質的の恩恵には、止まらなかった。
譲吉に対する夫人の贈与なり注意には、常に温い感情が、裏附けられて居た。その温情を譲吉は、沁々と感じて居るのであった。学資ばかりでなく、譲吉は、衣類や襯衣や、日用品の殆ど凡てを、近藤夫人の厚意に依って、不自由しなかったのである。
学校を出てからも、譲吉は近藤夫人の庇護なしには、何うともする事が出来なかった。
「富井さんも愈々口が定まったのなら、孰れ洋服が入るでしょうから、三越へそう云ってお調らえなさい。少しいいのを調えた方が結局は得ですから。」と譲吉が、入社が定まった事を報告に行くと、夫人は祝辞を述べてから、直ぐこう云い出した。譲吉は夫人に金を借りてでも、洋服を新調したい積りであったから、夫人のこうした好意は、骨身に浸みる程、有り難く感じたのである。無論、近藤夫人の好意は、洋服丈には止まらなかった。
「色々の身の廻りの物が入るでしょうから。」と云いながら、夫人は新しい十円札を三枚、譲吉の前に差し出した。
譲吉は、過去に於て幾度、夫人の華奢な手から、こうした贈与を受けたかも知れない。