Classici giapponesi con furigana
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おおしまができるはなし
大島が出来る話
菊池 寛
Leggi 大島が出来る話 (おおしまができるはなし) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9856 caratteri · 20 schermate
殊に彼の妻は、女性に特有な、衣類に対する敏い感覚と、執着とを持って居た。
「もう、セルを着て居ないと、見っともないわ。」と云い出すと、彼の妻は、譲吉がセルを買ってしまう迄は、五月蠅くその提言を繰返した。譲吉が金の都合で、何うしても応ぜぬ時などは、自分の小遣銭で、黙って買って来て、譲吉に内緒で縫って置いた。そうして、譲吉が改まって外出する時などは、「之を着て行かない!」と、不意に彼の眼の前に、仕立下ろしの衣物を、拡げて見せたりした。
が、譲吉の力でも、彼の妻の力でも、何うしても、出来ない着物があった。夫は大島絣の揃である。殊に譲吉の妻は、彼の為に大島を買う、熱心な主張者であった。
「男には大島が一番よく似合ってよ。貴方も、是非大島をお買いなさい、夫も片々じゃ駄目だわ。何うしても羽織と、着物とを揃えなけりゃ。是非お買いなさいよ、一疋買うといいんだから、今年の秋迄には是非お買いなさいよ。男は大島に限るわ。」と、彼の妻は、着物の話が出る度に、屹度大島を讃美したが、譲吉の月々の余裕と云っても夫は二三十円と、纏った金でなかった。又彼の妻としても、一度に三四十円も出す力は持って居なかった。