Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Leggi 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 145.722 caratteri · 286 schermate
白雲は興に乗じて語りつづけました。
「われわれの写すところは、形と色とだけの世界ですが……そこで小湊の浜辺には、あらゆる波の形が存在しているとすれば、おのずから、あらゆる波の色も存在している道理でしょう。西洋の画家は色を研究します、東洋とても色を蔑ろにはしませんが、形を写せば、色はおのずから出て来る道理です」
「そうはゆきますまい」
駒井はこの時、軽い抗議を挟みました。
「どうしてです」
白雲は熱心な眼をかがやかせて、駒井の抗議を食いとめながら、
「どうして形を写して、色が現わせないのですか」
改めて見直すまでもなく、白雲の描いた海は、一枚として着色のものはありません、みんな墨で描いたものばかりです。その点を駒井はいいました、
「桜の花だけを描いて、淡紅の色が出ますか、海の動きだけを写して、青く見えますか」
「そこです――」
白雲は膝を進ませて、
「そこです、私の描いたものにそれが現われなければ、私の恥辱です。森羅万象をいちいちそれに類似した色で現わさねばならぬという仕事は、私にいわせると細工師の仕事で、美術の範囲ではありません。私は墨で描いたこの海の波に、いちいちの色の変化を現わしたつもり――でなければ現わすつもりでかきました、色ばかりではない、音までも……」