Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Leggi 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 285.635 caratteri · 558 schermate
こんな晩だったな――そこで、与八はゾッとして、塞いでいた目を見開くと、運転を止めた水車小屋の荒涼たる梁から軒、高いところは一面の蜘蛛の巣がすっかり粉をかぶっている。
そこに一本長い女帯が、だらしなく解けほごれて、蛇のように横たわっているではないか。
それ、そこに、緋の襦袢が。おお、女が一人歯を喰いしばって身をふるわせている……あああ、結いたての島田の髪があんなに乱れちまった――あれでは帰れまい、帰されもすまい。
女も女だ――と寛怠な与八が歯噛みをする。
再び目をつぶって、長い鉄火箸をとって、盲さがしに火を突っついていたが、どうも女の息づかいが……荒い。どうしてこの息づかいが、今以てこの水車小屋を去らないのか。
いけない、いけない。
与八は、この時、携えて来たイヤな絵馬を取って炉の火に焼き捨てようとしたが、その途端にまたゾッとして、絵馬を持つ手をわななかせたのは、それは、今以て残る女の亡霊の幻とやらに驚かされたのではありません。与八は、その途端に、遠く犬の吠える声を聞きました。
犬の吠える声といっても、それは尋常の犬の吠える声ではありません。ここよりは頭上にあたる机の本家、今はそこに飼われているムク犬が、何に驚いてか、鐘をつくような声で吠えるのが、ありありと与八の耳に入りました。