Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Leggi 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 285.635 caratteri · 558 schermate
「弁信さん、火事というものは、近いところにいると怖いが、こうして遠くで見ていると、愉快なものねえ」
と言いました。
「なんとおっしゃいます」
弁信は、こちらを向かずに、押返しました。
「弁信さん、あなたには、あの盛んな火の色が見えないでしょうが、人の災難は別として、ただ見ている分には、なんという壮快なながめでしょう」
「そうですか、左様に見えますか、人間の災難も見ようによっては、愉快、壮快というものに見えるものですか。もし、そうだとすれば、人間の眼というものは怖ろしい魔術使いでございます。私は左様な魔術使いを、自分の面の中へ置かなかったことが幸いになります。人の災難を見て、愉快、壮快と感ずるような眼という魔術使いが、私のこの小さな面という領分の中にいてくれなかったことが、不具ではなくして、光栄であったかも知れません」
「弁信さん、理窟は抜きにして下さい、火というものは愉快なものです、壮快なものです、いっそ、この地上にある最も痛快至極なものであるかも知れません」
お銀様は、冷然として、昂奮してきました。冷然として昂奮はおかしいようですけれども、事実、さきほど、弁信に行当った当時は、多少とも、恐怖と、狼狽とに、とらわれていないでもありませんでした。