Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

Leggi 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 319.771 caratteri · 617 schermate

Aozora Bunko

「いい心持だなあ、月夜の川渡り」

「ほんとにいい心持だよう、月夜の布袋の川渡り」

「月夜に釜を抜かれるということがあるが、その解釈を知っているか」

「知らん――いろはガルタには、わかったようでわからんのが幾つもある、我々いい年をしながら、いろはさえ充分にはわかっとらん」

「況んや天下国家のことや」

「なんにしても、月夜の布袋の川渡りはいい」

しきりにこの二人が布袋の川渡り、布袋の川渡りということを口にしているのは、自分たちが菰を被っている頭の上に、身上道具の一切合財をいただいているからであろうとは思われる。身上道具の一切合財といっても、鍋釜で尽きているらしい。鍋釜を所有していれば、中に入れるものは、今日は今日、明日は明日で、絶対他力まかせになっているところに彼等の身上がある。そこで、月夜に釜を抜かれるという「いろはガルタ」が不意に飛び出したのも、つまり、頭上にいただく鍋釜から起った聯想らしい。

「乞食を三日すれば忘れられん――というが、まさに正真の体験だ」

「そうだ、この趣味がわかると全く、人間並み生活などはばからしくて出来るものではない、ただ人間並みを廃業して、ここまで来る試験地獄がつらい、ここへ来てしまえば、何という清浄にして広大なる天地だろう」