Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

Leggi 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 319.771 caratteri · 617 schermate

Aozora Bunko

「笠だけを届ければいいんですか、おやすいことです、広くもあらぬ福井の城下ですから、所番地さえわかっておりますれば」

「実は、福井の堺町というのです」

「堺町、知ってます」

「その堺町で、うつの家――福松というところへ、この笠を届けてもらいたい」

「堺町で、うつのや福松君ですか、よろしいです、番地はなくてもわかりましょう」

と心やすく引受けた。その語気によって察すると、この青年は、相手を男性と見ているらしい。男性と見ていないまでも、女性であり、ああした女だとは、夢にも当りをつけていない。実は、兵馬も、思いきってうつの家福松の名を言った時に、青年から一応、疑惑の眼を向けられての上で、反問をされるものと期待して、いささかテレて言い出したのですが、先方は、そんな思惑は微塵もなく、福松君ですか、福松君ならば――どこまでも、相手を男性に置いて疑うことをしないから、済まないが、むしろ勿怪の幸いだというような気分にもなって、兵馬としては図々しく、

「うつの家の福松と言えば、すぐにわかることになっているのですが、では、ひとつお願い申しましょうかな」

と言って、自分のかぶって来た一文字の笠を取り直しました。