Classici giapponesi con furigana
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しっちょうき
失蝶記
山本 周五郎
Leggi 失蝶記 (しっちょうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.072 caratteri · 44 schermate
六
私はうきうきするような気分になって云いました、「あなたはご存じないだろうが、私はあなたを知っているんですよ」
するとあなたはまた手帳を取って、杉永から聞いて自分もよく知っていると書かれ、また、耳のぐあいはどうかと書かれた。私はどうして失聴したかを話し、耳は一生治らないだろうこと、家督も弟に譲ったし、これからは耳なしでも生活できるような仕事を考えている、などということを話したと覚えています。――あなたは面変りをして、たいそう美しくなっておられた。色も白く、のっぽでもなく、どちらかというとむしろ小柄なほうで、鼻筋へ皺をよせる癖もなくなったようでした。
「杉永はなにを考えているんですか」と別れるまえに私は云いました、「あなたからもそう仰しゃって、早く式をあげるほうがいいですよ」
あなたは唇に微笑をうかべたが、なにもお書きにはならず、矢立と手帳を返されたので、私は別れを告げて帰ったのです。
六
滝でおめにかかったのが八月。十二月には孝明天皇が崩御され、年があけると今上の践祚された知らせがあり、二月には征長軍が解かれるなど、幕府の勢力の衰退と、王政復古の気運の増大とが、もはや避けがたい時の来たことを示すように、はっきりとかたちをあらわし始めました。