Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おんなとぼうし

女と帽子

豊島 与志雄

Leggi 女と帽子 (おんなとぼうし) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.614 caratteri · 33 schermate

Aozora Bunko

それをふみこたえて、苦笑したが、やがて、何と思ったか、帽子をとって、そのま新しいのをくしゃくしゃにまるめ、力一杯、石垣の上から海中に投げこんだ。帽子はまた広がって、うねりに揺れながらふわりと浮いていた。

今村の顔には次第に生気がさしてくるようだった。南京町にいって、支那料理屋にはいり、老酒をのみ、よく食べた。それから電車で東京に帰っていった。

電車の中で、今村は窓にもたれてうとうとしていた。その様子がすっかり心の落着きを示していたので、俺も安心して、言葉をかけてみた。

――波江さん、腹をたててたようですよ。あれで見ると、あなたのもくろみもまず成功だったわけでしょう。だが、最後に未練がましいことをして、きっと結んだ唇を差し出されるなんて、あまりいい図じゃありませんでしたね。その代り、帽子を海に投りこんだのは、ちょっと象徴的で、よかったですよ。

今村はうっすらと眼を開いて、また閉じた。そしてうつらうつらしながら、呟いたのである。

――最後のキスなんて、お別れの形式的なものだから、どうでもいいんだ。帽子のことだって、象徴的でもなんでもありゃあしない。ただ頭を風に吹かせたかっただけのことだ。