Classici giapponesi con furigana
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こをうばう
子を奪う
豊島 与志雄
Leggi 子を奪う (こをうばう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 39.292 caratteri · 80 schermate
兼子は明かに狼狽の色を見せた。
「僕にもよく分っているよ」と彼は云った。
兼子の幻滅は痛ましかった。彼女は今まで自分が慕われてると思い込んでいただけに、この打撃に会うと、依子の心の凡てを疑い出した。依子の素振りをじっと眺めながら、一人で苛立っていた。むやみに愛撫するかと思うと、邪慳に突き放した。そしてむりにもお母ちゃんと呼ばせようとした。
依子は変に几帳面な所があった。組みの玩具が一つ足りないと云っても、大騒ぎをした。何かのはずみに人形の片足が取れると、大声に喚き立てた。
「人形が壊れた、人形が壊れた。直してお母ちゃま。直してよ、お母ちゃま!」
それを聞くと兼子はきっとなった。
「勝手にお直しなさい!」と云い放った。
依子はわっと泣き出した。そして「お父ちゃま、お父ちゃま!」と叫び立てた。襖の影に陰れて、向うの室を走り廻っていた。
「何とかしておやりよ」と彼は兼子へ云った。
「あなたしておやりなすったらいいでしょう。あなたを呼んでるんですもの」と兼子は答えた。
彼は暫くじっとしていた。「お父ちゃまよう!」と依子は俄に泣き立てた。彼は兼子の方をじろりと見ながら、思い切って立っていった。