Classici giapponesi con furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Leggi 季節のない街 (きせつのないまち) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 201.379 caratteri · 394 schermate
徳さんは時と処とに頓着せず、相手さえあれば賭けを挑んだ。
「よう、一丁いこう、よう」と徳さんはせがむ、「次に来る市電の番号、丁か半か、よう、あれで一丁いこうったら、よう」
「なあ、一丁いこうよ、なあ」と彼はせがむ、「おめえの歯でいこう、上の歯で一丁、下の歯で一丁、それとも上下合わせてでもいいや、丁か半か」
「おっと待った」と彼はいそいで相手を押えるような手まねをする、「その口を閉めちゃあだめだ、口を閉めるとべろで歯の勘定ができるからな、口をあいて、それからべろを出しててくんな、さあ、丁か半か」
羽目板のもくめの数。通行ちゅうの老人のとし。繩の切れっ端。柑橘類の実の袋数。マッチの本数。花の花弁。電車のレール。橋桁。茶碗一杯のめし粒。――このように数えてもきりはない、つまり数の限定した事物以外なら、どんなものでも即座に賭けの材料にするのであった。
彼は三十二歳だと自慢しているが、本当は二十八か九であるらしい。筋肉質ではなく、ぼてっと中太りの躯に、夏も冬も洗いざらした浴衣一枚で、冬にはほころびだらけの半纏をひっかける。縞目もよくわからないほど古い、女物の半纏であるが、――女物じゃないかなどときくと、たいてい一時間ぐらいは、それを着ていてくれと泣いて頼んだ彼女について、よもやと思われるようなのろけを聞かされる。