Classici giapponesi con furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Leggi 季節のない街 (きせつのないまち) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 201.379 caratteri · 394 schermate
「晩めしは先生ですよ」
そう云いながら八田青年は、手をうしろにやってひらひらと振った。すると勝手の戸がごとっと動き、八田青年は慌てて大きく咳きこんだ。
「めしだなんて、主義者みたようなことを云うな、きみ、酒だ」先生はそこへあぐらをかき、縞ズボンの膝を摘んで皺を直しながら云った、「ぼくはこれから本式に飲むんだ、酎を買って来たまえ、きみにも奢る」
「お金を下さい」と云って八田青年は手を出した。
「か、ね、かね、かね」先生はモーニングの上衣の内ポケットからさつ入れを出し、中から紙幣を一枚抜いて八田塾生に渡した、「――国家将来について憂え金銭について憂う、寒藤清郷また多忙なりか、かつて大ビスマルクいわく」
八田青年は勝手へ徳利を取りにゆき、そちらからいそいで出ていった。そして、外の暗がりで待っていた誰かと、なにか囁きあう声がしたが、むろん寒藤先生には聞えない。先生は独りでビスマルク将軍と論争しながら、古畳の上に落ちていた細いヘアーピンを拾いあげ、それがなんであるかも気づかずに土間へ投げやると、仰向けにひっくりかえってしまった。
明くる朝、八田青年は先生とめしを喰べながら云った。