Classici giapponesi con furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Leggi 季節のない街 (きせつのないまち) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 201.379 caratteri · 394 schermate
われらの「街」から出たとらは、いま荒地を横切り、中通りをあるいてゆく。肥えていて大きいから、あるきぶりもおもおもしくゆったりしている。左の前肢を出すときには、左の肩肉がくりくりと動くし、次には右の肩肉がくりくりと動く。脇見などは殆んどしない、なにもかもわかっているのだ。ここが靴の修理屋で次が荒物屋で、その隣りのしもたやには犬がいるが、それは臆病者のめめしいやつで、格子の中できちがいのように吠えたてるが、ちょっと睨んでやると、まるでどこかを噛まれでもしたように、きんきん悲鳴をあげながら土間の隅へ隠れてしまい、すると顔の青ぶくれたような細君が出て来て、乳呑み児をあやすような、あまだるい声でなにか呼びかける。
「うん、ここを噛まれたんだ」とそいつは訴えるようなくんくん声を出す、「あいつです、あの悪い猫が僕のことを噛んだんですよ、いつもなんです」
「よしよし、だいじょぶよ」とその細君はそいつを抱きあげてとらのほうを睨む、「またとらのやつだわ、なんて憎たらしいつらをしているんだろう、しっしっ、あっちへゆけ、悪いのら猫だよ」
とらは軽侮にもあたいしない、といいたげに髭をふるわせてそこを去る。