Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いえ

家

島崎 藤村

Leggi 家 (いえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 126.748 caratteri · 254 schermate

Aozora Bunko

溢れ流れる温泉、朦朧とした湯気、玻璃窓から射し入る光――周囲は静かなもので、他に一人の浴客も居なかった。お種は槽の縁へ頸窩のところを押付けて、萎びた乳房を温めながら、一時死んだように成っていた。

窓の外では、温暖い雨の降る音がして来た。その音は遠い往時へお種の心を連れて行った。お種がまだ若くて、自分の生家の方に居た娘の頃――丁度橋本から縁談のあった当時――あの頃は、父が居た、母が居た、老祖母が居た。この小泉へ嫁いて来た老祖母の生家の方でも、お種を欲しいということで、折角好ましく思った橋本の縁談も破れるばかりに成ったことが有った。それを破ろうとした人が老祖母だ。母は老祖母への義理を思って、すでに橋本の方を断りかけた。もしあの時……お種が自害して果てる程の決心を起さなかったら、あるいは達雄と夫婦に成れなかったかも知れない……

思いあまって我と我身を傷けようとした娘らしさ、母に見つかって救われた当時の光景、それからそれへとお種の胸に浮んで来た。

これ程の思をして橋本へ嫁いて来たお種である。その志は、正太を腹に持ち、お仙を腹に持った後までも、変らない積であった。