Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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さむはし

寒橋

山本 周五郎

Leggi 寒橋 (さむはし) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.416 caratteri · 36 schermate

Aozora Bunko

川上の佃島のほうに、舟で燃す火がぼっと霞んで、点々と五つ六つ見えた。白魚網だろう、そのあたりから水面を伝って、人の声がとぎれとぎれに聞えて来る。

「――おっ母さん」

お孝はそっと呼んだ。父親がそこに釣糸を垂れている、母が女中に茶や弁当を持たせて来て、父のそばへいって跼む。

――来なくってもいいのに、風邪でもひいたら困るじゃないか。

――でも寂しくって、……寝られなかったから来てみたのよ、お茶をあがったら。

――済まないな、ちょうど欲しいところだった、おまえそうしているならこれをちょっとひっかけているがいい。

――あらいいのよ、それじゃああんたが寒いわ。

父と母とのこんな会話が、現にそこでとり交わされているように、ありありと聞える気がした。父と母との穏やかな、まじりけのない温かな愛情、お互いに劬りあい相手に誠実であった愛情、……それがそのまま、寒橋の岸のその石のところに、そのまま現に残っている、二人の愛情は今でもそこに生きている、そこに、その石の上に、……お孝にはそれが眼に見えるように思えた。

「――おっ母さん、あたし苦しいの、生きているのが辛いのよ、ねえ、……おっ母さん、あたしどうしたらいいの」