Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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てらさかきちえもんのとうぼう

寺坂吉右衛門の逃亡

直木 三十五

Leggi 寺坂吉右衛門の逃亡 (てらさかきちえもんのとうぼう) di 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9243 caratteri · 19 schermate

Aozora Bunko

吉右衛門は

「婆さん、もう一本」

と、いって、内へ入ってしまった。

五

神奈川まできた時、冬の陽は、薄暗くなっていた。それに雪解けの道を、戸塚までのすのは、骨であった。吉右衛門は、松屋へ泊った。

柱に、二本の燈芯の油皿の灯があるっきりで、湯気と、暗さとが一緒になっていた。狭い、汚い、風呂場であった。吉右衛門が入って行って

「はい、御免よ」

といったが、誰も答えないで

「えらいことを、やるもんだのう、忠義の士だよ」

と、一人が大声を出していた。

「何んしろ吉良の附人ってのが七八十人もいたが、一人も斬られずに、無事にお前さん上野を討取ってきたってのだから、何んと、凄い腕じゃ御座んせんか――ねえ、貴下」

「全く――」

「然もさ、その四十七人の中にゃあ、お前さん何んとかって、下郎が入っているって話ですぜ」

吉右衛門は、はっとした。そして、小さくなって、湯槽の隅へ入った。朧気に、四人の男の影が見えていた。

「年二両しか貰わねえのに、命をすてて尽そうってんだから、こいつが、先ず、忠義の大将だね」

「大将は誰だ」

「大石って、国家老だってことだ」

「ふうん、どっしりして、大将みたいな名だのう。