Classici giapponesi con furigana
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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
Leggi 寺田寅彦随筆集 第二巻 (えいがじだい) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 207.099 caratteri · 419 schermate
朝起きると寒暖計が八十度近くに来ているようになると、もう水で顔や頭髪を洗っても悪寒を感ぜず、足袋をはかなくても足が冷えない。これだけでもありがたい事である。自分のからだじゅうの血液ははじめてどこにも停滞する事なしに毛細管の末梢までも自由に循環する。たぶんそのためであろう、脳のほうが軽い貧血を起こして頭が少しぼんやりする。聴覚も平生よりいっそう鈍感になる。この上もなく静寂で平和な心持ちである。
昼間暑い盛りに軽い機械的な調べ仕事をするのも気持ちがいい。あまり頭を使わないで、そしてすればするだけ少しずつ結果があがって行くから知らず知らず時を忘れ暑さを忘れる。
陶然として酔うという心持ちはどんなものだか下戸の自分にはよくわからない。少なくも酒によっては味わえない。しかし暑い盛りに軽い仕事をして頭のぼうっとした時の快感がちょうどこの陶然たる微酔の感と同様なものではないかと思われる。そんなとき蝉でもたくさん来て鳴いてくれるといいのであろうが、このへんにはこの夏のオーケストラがいないで残念である。
喫茶店の清潔なテーブルへすわって熱いコーヒーを飲むのも盛夏の候にしくものはない。