Classici giapponesi con furigana
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こいわいのいっか
小祝の一家
宮本 百合子
Leggi 小祝の一家 (こいわいのいっか) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.193 caratteri · 31 schermate
あけて、入って、高い声で、
「こんちは――いませんか」
呼んでいる。乙女の息は坂をのぼったためばかりでなくせわしくなって、思わず口をあけるようにしその辺を見廻したが、さり気なく二軒ばかり手前から曲って裏へまわった。
折から、祖母ちゃんがバケツを出し洗濯ものを乾しかけてある。それをしぼり、竿にかけてひろげながら、物音たてず土間での応待をききすました。
「家族は、そうすると今のところ五人か?」
「さよでございます」
「その子は……ああ、ミツ子か」
おまわりは、帖簿をくってでもいるらしく暫く黙っていたが、やがてガチャリと佩剣の音をさせて足をふみかえた。
「それで……息子の勉っていうのが行方不明なんだな?」
乙女は、ミツ子の小さい桃色のズロースを握ったなり、耳の内がカーンとなるような気持である。祖母ちゃんは、いつものゆっくりした低い叮嚀な声で、
「へえ」
と答えている。
「どうして家出なんかしたんだね、子まであるのに――」
「…………」
「――放蕩かね」
「――まあ、そんなようなものでございます」
乙女は肩に力を入れて俯向いたまま思わずも笑いかけ、祖母ちゃん、でかした! 本当に乙女はそう思った。