Classici giapponesi con furigana
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ろうじゅうのめがね
小笠原壱岐守
佐々木 味津三
Leggi 小笠原壱岐守 (ろうじゅうのめがね) di 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 57.249 caratteri · 115 schermate
「ポルトガル国トノ交易通商ハ、最早ヤ断乎トシテ之ヲ貫ク以外ニ途ハナシ。早々ニ条約締結ノ運ビ致スヨウ、諸事抜リナク御手配可然候。人ノ命ニ明日ハナシ。ソノ心シテ諸準備御急ギ召サルベク安藤対馬シカト命ジ置キ候」
筆をおくと凛として言った。
「予が遺言に――、いや、夜がいか程更けておろうと火急の用じゃ。すぐさま外国奉行の役宅へ持参させい」
「ではもうやはり――」
「聞くがまではない。ちらつく……、ちらつく、予の目には只あれがちらつくばかりじゃ……」
声をおとして、他を顧みるように言うと、対馬守は静かにきいた。
「湯浴の支度は整うておるであろうな」
「おりまするで厶ります」
――入念な入浴だった。
そうして夜が白々と明けかかった。紊れも見えぬ足取りでお湯殿から帰って来ると、対馬守は愈々静かに言った。
「香を焚け」
いかにも落ちついた声なのである。焚いてそのお膝の前に格之進が捧げ持っていったのをズバリと言った。
「聴くのでない。予が頭に焚きこめい」
はっとなって老職は、打ちひしがれたように面を伏せた。死を覚悟されているのである。斎戒沐浴して髪に香を焚きこめる、――刺客の手にかかることがあろうとも、見苦しい首級を曝したくないとの床しい御覚悟からなのだ。