Classici giapponesi con furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Leggi 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) di 正岡 容 (まさおかいるる) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 163.270 caratteri · 325 schermate
「シャーイ……シャーイ……」
赤と青と提灯の灯が揺れ、拙い字で天狗連らしいちぐはぐな落語家の名前が、汚れた庵看板の中にでかでかと書かれてあった。まだお客は一人もつっかけていないらしかった。
でも提灯の灯も庵の中の芸人の名前も何にも次郎吉には見えなかった。ただシャーイシャーイというあの聞き馴れた声ばかりが大きくなつかしく聞こえてきた。恋びとの声にも似て、それはキューッと胸許を嬉しく苦しく掻きみだし、また締めつけてきた。
「……」
黙ってスーッと入っていった。そのまんま正面にひろがっている大きな段梯子をカタカタ上がっていこうとした。
「オ、オイ兄ちゃん下駄々々、下駄ッたら、困るよ兄ちゃん、そんな下駄のまんまで上がられちゃ」
背中からけたたましい下足番の声が追い駈けてきた。
「……」
やっぱり黙ったまんま後戻りして黙って下駄をぬいだ。そのまんま黙って上がっていこうとした。
「オ、オイ木戸銭々々々」
またけたたましい下足番の声が追い駈けてきた。
「……」
三たび黙って後戻りすると、シッカリ両手に掴んでいたものを、ポンと下足番の前へ突き出してひらいた。
コロコロコロ。