Classici giapponesi con furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Leggi 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 83.234 caratteri · 160 schermate
母は子供に気付かれたと思うと、慌てゝ顔を子供の顔にぴったりと擦りつけたので、却って何も見えなくなってしまったが、その代り睫毛にたまっていた涙の玉が子供の頬に冷めたく触れた。滋幹は、後にも先にも母の顔をまざ/\と見たのはその一瞬間だけであったが、而もその時の目鼻立の印象と、その美しさの感銘とが、長く脳裡に焼きつけられて、生涯消えずにいたのであった。
母がそうして顔を押しつけていたのは、どのくらいの時間であったか、その間母は泣いていたのか、考えごとをしていたのか、等々のことも滋幹には思い出せないのであるが、やがて母は女房に半挿を持って来させて、滋幹の腕にある文字を拭った。女房が拭い取ろうとするのを制して、母が自分で拭ったのであったが、拭い取る時にいかにも惜しそうに、一字々々、頭へ刻みつけるように視すえつゝ消した。それから母は、さっき平中がしたように我が子の袂をまくり上げて、左の手で彼の手を握り、前の文字を消したあとへ、前と同じくらいの長さに文字を走らした。
初めに滋幹が腕をまくって見せた時は、母のほかには誰もいなかったのであるが、知らぬ間にそこへ女房が二三人来ていたので、滋幹は平中に云われたことが気にかゝったが、でもその人たちは母に信頼されていて、総べてのことを知らされていたらしいのであった。