Classici giapponesi con furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Leggi 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) di 尾崎 士郎 (おざきしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.032 caratteri · 216 schermate
彼はあの娘に対して自分だけが道徳的な責任を感ずる理由は無いと思った。何故かといって、彼が若しとることを躊躇したとしても、あの色づいた木の実は、偶然あの下を通りかかった誰れかによって必ずとられるであろうから。そういう考が南里君の食慾を駆り立てた――「そうだ。今夜こそ、おれは」南里君は自分の決意をたしかめるもののように心の中で繰り返した。その夜、南里君は計画どおり娘に近づいていった。そして、無造作に、全く無造作に娘の唇に触れたとき、彼は娘の存在が彼の掌の中に握りしめられた鶺鴒の雛よりも以上の何ものでもないことを感じた。しかし、夜が更けて、娘とわかれて宿へ帰ってから、彼の心は思いがけない一つの考によって圧えつけられた、彼は見知らない一人の男の顔を頭に描いた。そして――あの男がとった以上はおれがとったところで差支ない筈だ。――そう呟いている男の姿である。南里君はそういって瀬川君に話した。彼女の運命を支配する微妙な力をまざまざと見せつけられたような気がしたからである。――
数日後、南里君は、夜おそくまで話しこんでいた瀬川君をおくって外へ出た。夜がおそいし、それに月があるので、大気が澄み透っていた。