Classici giapponesi con furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Leggi 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) di 尾崎 士郎 (おざきしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.032 caratteri · 216 schermate
うねうねとつづく街道筋を歩いて二人が何時の間にか石地蔵のある断崖の近くへくるまで南里君は鶺鴒の巣のあることを忘れていた。しかし、石地蔵の前までくると一瞬間、非常に冷めたいものが南里君の胸をすべっていった。不吉な妄想が彼の頭にうかんだのである。ことによるとあの巣の中には鶺鴒の雛は一つもいないのではあるまいか。――南里君は足音を忍ばせて岩のかげに近づいていった。巣はもとの場所にあった。巣の中には一羽の鶺鴒が羽をひろげてうずくまっていた。
「こいつはね、この二、三日僕が通るごとに巣の中にしゃがんでいるんだ。雛をとられやしないかと思って警戒しているのかも知れないね――」
うしろから肩越しに覗きこむようにして瀬川君が言ったとき、鶺鴒は急に物におびえたように巣の中からとびあがり、街道を横切って樹立の闇の中へ消えていった。
南里君の眼の前には、ほのかな月明りに照らし出された空虚な巣があった。積みあげた枯草の一角がばらばらに壊れて、巣の中は空き家のようにがらんとしている。そこには小さな雛の頭すら見出すことができなかった。
「へんだね。――雛はもう一つもいないじゃないか!」