Classici giapponesi con furigana
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しまばらしんじゅう
島原心中
菊池 寛
Leggi 島原心中 (しまばらしんじゅう) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.293 caratteri · 29 schermate
従って、その日――たしか十一月の初めでした――上席の検事から、島原へ出張を命ぜられたとき、僕は自分の心に、妙な興味が動くのを抑えることができなかったのです。島原へ行く、しかもその朝行われた心中の臨検に行くというのですから、僕は場所に対する興味と、事件に対する興味とで、二重に興奮していたわけです。
『島原心中』という言葉が、小説か芝居かの題目のように、僕の心に美しく浮んでいたのでした。
が、俥がそれらしい大門を通りすぎて、廓の中へ駆け込んだとき、下ろした幌のセルロイドの窓から十一月の鈍い午後の日光のうちに、澱んだように立ち並んでいる、屋根の低い朽ちかけているような建物を見たときに、それが名高い色街であるというだけに、いっそう悲惨なあさましいような気がしたのです。衰弱し切った病人が、医者の手から、突き放されて、死期を待っているように、どの家もどの家も、廃頽するままにまかせられているような気がしたのです。定紋の付いた暖簾の間から見える家の内部までが、どれもこれも暗澹として陰鬱に滅亡して行くものの姿を、そのまま示しているように僕には思われたのです。
俥が、横町へ折れたとき、僕の目の前に現れた建物は、もっと悲惨でした、悲惨というよりも、醜悪といった方が、適当でしょう。