Classici giapponesi con furigana
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かわばたやなぎ
川端柳
豊島 与志雄
Leggi 川端柳 (かわばたやなぎ) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2612 caratteri · 6 schermate
或る刑務所長の話に依れば、刑期満ちて娑婆に出た竊盗囚が再び罪を犯すのは、物に対する「欲しい」という感情からよりも、「惜しい」という感情からのことが多いという。「欲しい」という感情はまだ押えることが出来る。然し「惜しい」という感情はどうにも出来ないとか。
刑務所から娑婆に出た喜びは、自由の喜びという一言でつくされる。何をしようと何処へ行こうと全く自由なのだ。「自由の身となった、自由の身となった、」そう彼は心に叫びながら歩き廻る。そして目につく凡てのものが、如何にも美しい輝きを帯びている。まだ頭の中に残ってる刑務所内の生活、厳めしい建物、陰欝な空気、看守の顔、そういうものに対照して、何と娑婆の世界が輝いてることか。その輝かしい中に、一際輝いてるもの、例えば、ダイヤの指輪が、彼の注意を惹きつける。彼は本能的にその方へ寄ってゆく。欲しいなと思う。まではまだ抵抗出来るけれど、次の瞬間には、惜しいなと思う。盗めば盗めるのに惜しいなと思う。俺が盗まなくても、どうせ誰かが盗むのだろう――(盗人の心理の面白さよ)――誰かが盗むだろう、むざむざと人に盗ませて……実に惜しいな、と思う。