Classici giapponesi con furigana
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パリさい
巴里祭
岡本 かの子
Leggi 巴里祭 (パリさい) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.324 caratteri · 60 schermate
窓から見える塀の金鎖草の蔓の一むらの茂みが初夏の夕暮の空に蓬髪のように乱れ、その暗い陰の隙から、さっき茶を呑んだ隣のベッシェール夫人の庭の黄ろい草が下方に小さく覗かれる。あれから夫人はまた多少のヒステリーを起し、いつもよくやるようにピカ/\光る裁縫鋏の冷たい腹を頬に当てゝ、昔訣れた幾人もの夫の面影を胸の中に取出し、愛憎交々の追憶を調べ直しているのではあるまいか。夫人の最後の夫ジョルジュには夫人はまだ未練があるようだ。そのせいかジョルジュの話をするときに夫人は一番新吉に粘りつく。
新吉は窓に近く寄ってみた。雲一つなく暮れて行く空を刺していた黒い鉄骨のエッフェル塔は余りににべも無い。新吉はくるりと向き直って部屋の中を見た。友達のフェルナンドが設計して呉れたモダニズムの室内装飾具は素っ気ないマホガニーの荒削りの木地と白真鍮の鋭い角が漂う闇に知らん顔をして冷淡そのものを見るようだ。フェルナンドは若くて死んだアルザス人だ。夭逝した天才の仕事には何処か寂しいエゴイズムが閃めいているものだ。
新吉はこの部屋へ今にも訪ねて来る約束のリサに会い度くなってしまった。