Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まぼろしのかなた

幻の彼方

豊島 与志雄

Leggi 幻の彼方 (まぼろしのかなた) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 41.763 caratteri · 84 schermate

Aozora Bunko

彼女の世界の混乱してることが、わきからもよく見て取られた。それが二日続いた。順造は心の慴えを禁じ得なかった。しっかりしていなければいけないと思った。

その二日目の午後に、坪井医学士は彼をわきへ呼んで云った。

「どうも仕方がありませんね。……いつどんなことになるか分らない状態ですから、もしお知らせなさる所がありましたら、今のうちに……。」

「そんなに悪いんでしょうか。」

「まださし迫ってどうということはありますまいが、何しろ、軽い脳症を起していますからね。……そして、脳と同じ位に心臓にも打撃を受けています。」

順造は黙って頭を下げた。

然しどうも、それとはっきり信じられなかった。精神が苦闘から脱して漸くうち勝ちかける頃に、興奮の余り多少混乱することは、常識から考えても肯定出来た。またそういう実例はいくらもあった。秋子の場合もそれに違いないように思われた。あんなに疲憊しつくしていたのが、俄に元気になったのだった。

彼は看護婦に相談してみた。

「左様でございますね、脈はいくらかお悪いようですけれど、食慾は増していらしたのですから……。」

然し結局の断定は得られなかった。