Classici giapponesi con furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Leggi 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) di 堀 辰雄 (ほりたつお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 85.965 caratteri · 169 schermate
――父母の墓のまわりには、何かが、目に立つほど変っていた。
それはその墓のうしろに亡父の百カ日忌のときの卒塔婆が数本立っているせいばかりではなさそうだった。又、このまえ妻と来たとき、あちらこちらに咲いていた樒の花がもう散ったあとで、隣りの墓の垣の破れかけたのにからみついた昼顔の花がこちらの墓の前まではかなげな色をして這いよっているせいでもなさそうだった。
変化はむしろ私自身のうちにだけ起っていたのであろう。そのとき私はたった一人きりだった。一人きりで私がこの墓の前に立ったのは、これがはじめである。しばらく一人きりでいたかったために、寺にも寄らずに真っすぐに墓のほうに来た。そうして私はただ柵の外から苔のついた墓を向いてじっと目をつぶっていただけである。
「おれはどうしていままでお母さんのお墓まいり位はもっとしておいて上げなかったのだろう」と私は考え続けていた。「……いつも、いくらお母さんのだって、お墓なんぞはといった気もちでいた。そういった気持で、自分がお母さんのために何をしようとしまいと、いってみればお母さんのことなど考えようと考えまいとおんなじだ、といったように、お母さんというものに安心しきっていられたのだ。