Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かれ

彼

芥川 竜之介

Leggi 彼 (かれ) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4980 caratteri · 11 schermate

Aozora Bunko

僕は早速彼と一しょに亀井戸に近い場末の町へ行った。彼の妹の縁づいた先は存外見つけるのに暇どらなかった。それは床屋の裏になった棟割り長屋の一軒だった。主人は近所の工場か何かへ勤めに行った留守だったと見え、造作の悪い家の中には赤児に乳房を含ませた細君、――彼の妹のほかに人かげはなかった。彼の妹は妹と云っても、彼よりもずっと大人じみていた。のみならず切れの長い目尻のほかはほとんど彼に似ていなかった。

「その子供は今年生れたの?」

「いいえ、去年。」

「結婚したのも去年だろう?」

「いいえ、一昨年の三月ですよ。」

彼は何かにぶつかるように一生懸命に話しかけていた。が、彼の妹は時々赤児をあやしながら、愛想の善い応対をするだけだった。僕は番茶の渋のついた五郎八茶碗を手にしたまま、勝手口の外を塞いだ煉瓦塀の苔を眺めていた。同時にまたちぐはぐな彼等の話にある寂しさを感じていた。

「兄さんはどんな人?」

「どんな人って……やっぱり本を読むのが好きなんですよ。」

「どんな本を?」

「講談本や何かですけれども。」

実際その家の窓の下には古机が一つ据えてあった。古机の上には何冊かの本も、――講談本なども載っていたであろう。