Classici giapponesi con furigana
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びしょう
微笑
横光 利一
Leggi 微笑 (びしょう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.911 caratteri · 50 schermate
句会に興味のなさそうなその兄は、間もなく、汽車の時間が切れるからと挨拶をして、誰より先に出ていった。
「橙青き丘の別れや葛の花」
梶はすぐ初めの一句を手帖に書きつけた。蝉の声はまだ降るようであった。ふと梶は、すべてを疑うなら、この栖方の学位論文通過もまた疑うべきことのように思われた。それら栖方のしていることごとが、単に栖方個人の夢遊中の幻影としてのみの事実で、真実でないかもしれない。いわば、その零のごとき空虚な事実を信じて誰も集り祝っているこの山上の小会は、いまこうして花のような美しさとなり咲いているのかもしれない。そう思っても、梶は不満でもなければ、むなしい感じも起らなかった。
「日ぐらしや主客に見えし葛の花」と、また梶は一句書きつけた紙片を盆に投げた。
日が落ちて部屋の灯が庭に射すころ、会の一人が隣席のものと囁き交しながら、庭のま垣の外を見詰めていた。垣裾へ忍びよる憲兵の足音を聞きつけたからだった。主宰者が憲兵を中へ招じ入れたものか、どうしたものかと栖方に相談した。
「いや、入れちゃ不可ん。癖になる。」
床前に端座した栖方は、いつもの彼には見られぬ上官らしい威厳で首を横に振った。