Classici giapponesi con furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Leggi 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 193.050 caratteri · 383 schermate
こうなると、酒狂も以前の父に返って来た。些細なことばの端も、父の酒気と虫の居所に触れると忽ちそれが、母を終日泣かしめるたねになった。家が広かったり、客の出入りや雇人もいた頃は、まだ父の酒狂にも、制約があったが、狭い借家では、母の逃げ交わす所もないし、父自身、俥を飛ばして茶屋遊びに出てしまう事もないので、悲劇が起きると、相互の感情が自然に疲れ切ってしまうまで、幕間い無しの悲劇になった。
酒狂の父は、どうかすると、真夜半ごろ、とつぜん蒲団の上に起直って、深い腕ぐみしていたり、天井へ向って独り言を吐く。そんなことがよくあった。そして貧苦と添乳に疲れきって、くたくたに寝入っている母を「おいく、おいく」と、無理に呼び起し「おれだってな、この儘では終りはせんぞ。いいか、意地でももう一旗上げてみせるつもりだ。貴さまあ、昼間おれにむかって、何とか、口ごたえしたが、そうこのおれを馬鹿にするなよ、この俺を」と、云い出したりするのである。
父のそうしたひがみと、憎てい口は、自身の酒量が増してゆく比例に連れて、つのッて行った。往々、子のぼくにさえ「馬鹿にするな」と怒ったり、「稼ぎを鼻にかける奴だ」