Classici giapponesi con furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Leggi 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 193.050 caratteri · 383 schermate
神経質なほど注意深いパイロットの間断ない呼子笛と指揮の下に、その間の全操作と、船体定着の作業は、すべて船具部が総がかりでやる。その烈しさといったらない。まるで戦場の血相と騒ぎだ。この間にまごついてなどいると、仮借なく、がなりつけられる、張り仆される。
船の巨体が漸次、沈下してゆく機微な瞬間に、ドックの石段側と船腹へかけて、車のついたロップを用い、船体の不動を保つ為のツチとよぶ巨材を何十本となく丸木橋のように横へ支え渡すのだった。そして船底が竜骨台に坐るせつな、全員で石段側のツチの根本に分れて立ち、二人ずつ向い合って、大きなハンマーで一せいに欅板の締め木を打込む。それは舷頭からパイロットが吹く呼子笛の一声一声の下に、全員のハンマーが鳴るので、一種何ともいえない音響をもち、ドック中を震撼する。
終るとすぐ、一枚の締め木を持ち、片手には重いハンマーをさげた工員が、石段側からツチの上を猿走りに渡ってゆき、船腹とツチとの間隙に、その締め木を打込んで帰って来る。ツチはおよそ電柱よりも一廻り太い巨材だが、角に面をとってあるのもあり、中には殆ど丸材をハスッた程度の物もある。