Classici giapponesi con furigana
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いかりのむし
怒りの虫
豊島 与志雄
Leggi 怒りの虫 (いかりのむし) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.457 caratteri · 24 schermate
女中も顔馴染みだった。
「お誂えは……。」
「第一に酒、あとは何でもいいよ。」
木山の眼になにか陰欝な影があった。塚本夫人は障子の腰硝子越しに外を眺めていた。木山は煙草を差出した。
「今日は、煙草はどうなんです。」
塚本夫人は眼を向けた。
「いや、煙草のことですよ。たくさんお吸いになる時は、御機嫌のよい時で、あまりお吸いにならない時は、御機嫌のわるい時だと、僕が言ったでしょう。今日はどちらなんです。」
「冷淡な仰言りようね。そんなら、やけに吸いましょうか。あなたは、お酒をやけにおあがり下さい。」
もうここでは塚本夫人ではなく、ただの由美子だった。コートを脱ぎすて、膝を少しく崩し加減に坐り、帯の刺繍がやたらにぴかぴか光っていた。その刺繍と同じように、彼女の視線が、木山の眼を刺戟した。
「なんにも、尋ねて下さいませんのね。」
「尋ねるって、いったい、なんのことなんです。」
「昨晩もちょっと申しましたでしょう、塚本のこと。」
「だって、あなたはまだ、なんにも話して下さらないし……。」
「それでは、お考え下さいましたの。」
「考えましたが、僕には、事情がよく分らないし……。」