Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

Leggi 思い出す事など (おもいだすことなど) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 57.003 caratteri · 113 schermate

Aozora Bunko

三十二

その時の余にはこう聞かれるだけの色気は充分あった。けれども病に罹った余は、白髪を看板にして事をしたいくらいまでに諦めよく落ちついていた。

病の癒えた今日の余は、病中の余を引き延ばした心に活きているのだろうか、または友人と食卓についた病気前の若さに立ち戻っているだろうか。はたしてスチーヴンソンの云った通りを歩く気だろうか、または中年に死んだ彼の言葉を否定してようやく老境に進むつもりだろうか。――白髪と人生の間に迷うものは若い人たちから見たらおかしいに違ない。けれども彼等若い人達にもやがて墓と浮世の間に立って去就を決しかねる時期が来るだろう。

桃花馬上少年時。 笑拠銀鞍払柳枝。

緑水至今迢逓去。 月明来照鬢如糸。

三十二

初めはただ漠然と空を見て寝ていた。それからしばらくしていつ帰れるのだろうと思い出した。ある時はすぐにも帰りたいような心持がした。けれども床の上に起き直る気力すらないものが、どうして汽車に揺られて半日の遠きを行くに堪え得ようかと考えると、帰りたいと念ずる自分がかなり馬鹿気て見えた。したがって傍のものに自分はいつ帰れるかと問い糺した事もなかった。