Classici giapponesi con furigana
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あやしのもの
怪しの者
国枝 史郎
Leggi 怪しの者 (あやしのもの) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.259 caratteri · 25 schermate
大工の棟梁とは申しましても、尾張様御用の持田家は、素晴らしい格式を持っていまして、津田助左衛門様、倉田新十郎様、などという、清洲越十九人衆の、大金持の御用達衆と、なんの遜色もないのでありまして、その持田様のお娘御でございますことゆえ、召されておられるお召し物なども、豪勢なもので、髪飾りなどは銀や玳瑁でございました。
「ほんとに好い男振りでございますのね」
とお柳という女中も申しましたっけ。
「馬鹿め、何が好い男だ!」
とうとうわたしは腹立たしさのあまり、かなり烈しい声で、そう言ったものでございます。するとどうでしょうお柳という女は、わたしをジロリと見返しましたが、「いいじゃアないか、お嫉妬でないよ」
と、言い返したではありませんか。
それから十日ばかりの日がたちました。ある日わたしはいつものように、縄張りの諸家様を廻り、合力を受け、夕方帰路につきました。鳥にだって寝倉がありますように、乞食にだって巣はございますので。瓦町の方へ歩いて行きました。考えごとをしておりましたので。町の口へ参りましたころには、初夜近くなっておりましたっけ。ふと行く手を見ますと、一人のお侍さんが、思案にくれたように、首を垂れ、肩をちぢめて歩いて行く姿が、月の光でぼんやりと見えました。