Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きょうふおう

恐怖王

江戸川 乱歩

Leggi 恐怖王 (きょうふおう) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 66.038 caratteri · 133 schermate

Aozora Bunko

では、今度はゴリラ男ではなかったのか。

「失礼。女中さん達が怖がって、よりつかないものですから。……何が浮いていたのです」

蘭堂は、少し照れて、詫びごとをしながら、聞返した。

「これ、これ」

夏子は気味悪そうに、浴槽の片隅の一物を指さしていたが、それと同じ湯につかっているのに耐えられなくなったのか、思い切った様に、そのものを掴んで、浴槽の外へ放り出した。

その刹那、夏子の手が三本になった。五つに分れた指が、都合十五本、それが八つの鏡に反射して、無数の手首となって躍った。

流し場に放り出されたものは、正しく人間の手首であった。肘の所から切断した、見るも恐ろしい生腕であった。それが、白いタイルの上で、蒟蒻の様にいつまでもブルブル震えていた。

ただ事ではない。生腕が降る訳もなく、水道の蛇口から湧き出す筈もない。何者かがソッと投げ込んで置いたのだ。何者ではない。あのゴリラ男に極っている。彼奴が逃出す時、置土産に残して行ったのだ。

だが、ここに片腕が落ているからには、それを切られた人がなければならぬ。では、彼等は又しても、どこかで恐ろしい殺人罪を犯したのであろうか。